土地の法規制

土地があれば家が建てられるわけではない!

家はどこにでも建てられるわけではありません。

立地、広さ、地盤などの条件が揃った土地が見つかっても、地域によっては法規制が敷かれている場合があります。

家を建てるためには、それぞれの敷地ごとに適用されるさまざまな法規制をクリアしなければなりません。
都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法など…
膨大な数の法律が絡んできます。

理想の家づくりを進めるため、その敷地に適用される法律を知っておくことも必要です。

 

知っていますか?住宅建築の法規制

「都市計画法」という法律をご存知でしょうか?

土地の利用方法について制限を設けた法律です。

様々な用途の建築物が無秩序に混在することを防ぐ目的で制定され、地域ごとに合理的な立地規制、用途規制を促しています。

この法律により、私たちの一定の生活環境が守られているのです。

都市計画法に制定された地域の中で、以下の三つに分類されます。


①市街化区域
積極的に整備、開発を行っていく場所

②市街化調整区域
農地や山林を残し自然環境を保持するため、当面は開発を抑えていく場所

③無指定区域・都市計画区域外
無指定区域や都市計画区域外の土地は、農地法や自然公園法などの規制がなければ原則として建築することが可能な地域です。
※しかし、電気や水道などが敷設されていない原野のような所もあり、現実的には建てられないこともあります。

一般的に住宅を建築する場合、たいていは市街化区域内ですが、この区域内にはさらに用途地域という規制が設けられています。

用途地域は、その地域をどのような目的で利用するかによって以下12個に分けられています。

※良好な住宅環境を目的としている住居系の地域では床面積、高さ、構造などの厳しい規制があり、道路や敷地が狭いほど建築の自由度が低くなります。
※用途地域に関しては、各自治体が独自に地域分けを行っています。

①第一種低層住居専用地域
最大の特徴は、建築物の高さが10m(または12m)以下に制限されていることです。
これを「絶対高さの制限」といいます。
建ぺい率:30%から60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:50%から200%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム

■建築できないもの
1.大学、専修学校、病院
2.店舗
3.事務所
4.工場
5.ホテル・旅館
6.遊戯施設・風俗施設
7.自動車教習所
8.倉庫業の倉庫


②第二種低層住居専用地域
第一種と同様、建築物の高さが10m(または12m)以下に制限されています。
・建ぺい率:30%から60%の範囲内(10%きざみ)
・容積率:50%から200%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(日用品販売店舗、喫茶店、理髪店等のみ)
4.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

■建築できないもの
1.大学、専修学校、病院
2.上記に挙げたもの以外の店舗
3.事務所
4.上記に挙げたもの以外の工場
5.ホテル・旅館
6.遊戯施設・風俗施設
7.自動車教習所
8.倉庫業の倉庫


③第一種中高層住居専用地域
建ぺい率:建ぺい率は30%から60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(日用品販売店舗、喫茶店、理髪店、物品販売店舗、飲食店、銀行など)
4.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

■建築できないもの
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.ホテル・旅館
5.遊戯施設・風俗施設
6.自動車教習所
7.倉庫業の倉庫


④第二種中高層住居専用地域
建ぺい率:建ぺい率は30%から60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(2階以下かつ1,500平方メートル以下のものに限る。すべての業種が可能)
4.事務所(1,500平方メートル以下のものに限る)
5.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

■建築できないもの
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.上記に挙げたもの以外の事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.ホテル・旅館
5.遊戯施設・風俗施設
6.自動車教習所
7.倉庫業の倉庫


⑤第一種住居地域
建ぺい率:建ぺい率は30~60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの

■建築できないもの


⑥第二種住居地域
建ぺい率:原則として50%、60%または80%
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの

■建築できないもの


⑦準住居地域
建ぺい率:30~60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(3,000平方メートル以下のものに限る)
4.事務所(3,000平方メートル以下のものに限る)
5.危険や環境悪化の恐れが非常に少ない作業場面積が50平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館(3,000平方メートル以下のものに限る)、
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場等(3,000平方メートル以下のものに限る)
8.自動車教習所(3,000平方メートル以下のものに限る)

■建築できないもの
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.上記に挙げたもの以外の事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.上記に挙げたもの以外のホテル・旅館
5.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設
6.上記に挙げたもの以外の自動車教習所
7.倉庫業の倉庫


⑧近隣商業地域
建ぺい率:30~60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの

■建築できないもの


⑨商業地域
建ぺい率:原則として60%または80%
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(面積の制限なし)
4.事務所(面積の制限なし)
5.危険や環境悪化の恐れが少ない作業場面積が150平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館(面積の制限なし)
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(面積の制限なし)、客席が200平方メートル未満のミニシアター
8.自動車教習所(面積の制限なし)
9.倉庫業の倉庫

■建築できないもの
1.上記に挙げたもの以外の工場
2.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設


⑩準工業地域
建ぺい率:原則として50%、60%または80%
容積率:100%から500%の範囲内(6種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(面積の制限なし)
4.事務所(面積の制限なし)
5.工場(面積の制限なし・ただし危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させる恐れのある工場を除く)
6.ホテル・旅館(面積の制限なし)
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(面積の制限なし)、料理店、キャバレー
8.自動車教習所(面積の制限なし)
9.倉庫業の倉庫

■建築できないもの
1.個室付き浴場
2.危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させる恐れのある工場


⑪工業地域
建ぺい率:原則として50%または60%
容積率:100%から400%(5種類)の範囲内
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(面積の制限なし)
4.事務所(面積の制限なし)
5.工場(面積の制限なし)
6.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(面積の制限なし)
7.自動車教習所(面積の制限なし)
8.倉庫業の倉庫

■建築できないもの
1.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院
2.ホテル・旅館
3.映画館・劇場、料理店、キャバレー、個室付浴場


⑫工業専用地域
建ぺい率:30%から60%の範囲内(10%きざみ)
容積率:100%から400%の範囲内(5種類)
また、以下の用途規制が行われています。

■建築できるもの
1.公衆浴場
2.店舗(面積の制限なし、ただし飲食店等を除く)
3.事務所(面積の制限なし)
4.工場(面積の制限なし)
5.カラオケボックス
6.自動車教習所(面積の制限なし)
7.倉庫業の倉庫

■建築できないもの
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院
3.老人ホーム
4.飲食店等
5.ホテル・旅館
6.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場、パチンコ屋・麻雀屋、映画館・劇場、料理店、キャバレー、また、良好な住宅環境を目的としている住居系の地域では床面積、高さ、構造などの厳しい規制があり、道路や敷地が狭いほど建築の自由度が低くなります。
※用途地域に関しては、各自治体が独自に地域分けを行っています。

 

建ぺい率と容積率で家の大きさが決まる!

住宅の大きさの上限を定めているのが、「建ぺい率」と「容積率」なのです。
 

①建ぺい率

建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合のことで、「建坪」といえばピンとくるかと思います。

用途地域との組み合わせで、30%から80%に定められていますが、場合によっては実質的に「制限なし」とされることもあります。
 

②容積率

容積率とは、延べ床面積の敷地面積に対する割合のことで、容積率200%といえば、50坪の敷地に延べ100坪までの建物が建てられるということになります。

建ぺい率と同様に、用途地域との組み合わせによって50%から1300%の間で定められています。

ただし、容積率で注意しなければならないのは、前面道路の幅員が12m以下のとき(大半の住宅地が当てはまります)には指定された数値よりも厳しく制限される場合があります。

たとえば、住居系の用途地域で前面道路の幅員が4mのときには、指定容積率が200%でも、実際に適用される容積率は160%となります(道路幅員×10分の4:他の数値の場合もあります)。

また、道路斜線、隣地斜線、北側斜線など別に定められた制限により、容積率のすべてを使うことができない場合も少なくありません。

一方で、容積率にはいろいろな緩和規定(不算入規定)などがあるため、実際に建てられる面積を判断することが難しいケースも多くなっています。

そういった場合には、専門家である建築士・設計士に相談することをおススメします。
 

③接道義務

都市計画区域内の敷地では、公道・私道を問わず、建築基準法で定められた道路に「2m以上」接していなければ建物を建てることができないという規則があり、これを「接道義務」といいます。

建築基準法上の道路に「2m以上」接するとは、不整形の敷地で道路に接する間口が狭い場合や、いわゆる旗ざお状の敷地(敷地延長などともいいます)で路地状部分の幅が狭い場合における「最低限の幅」を定めたものです。

さらに、建築基準法に定める道路は原則として幅員4m以上(指定がある場合には6m以上)で、これに足りない場合には道路の両側で均等に敷地位置を下げなくてはなりません。

これを「敷地のセットバック」といいますが、 道路を挟んだ敷地の向かい側が川や崖などの場合には、不足分を一方的に下げなくてはならないことになります。

このセットバック部分の面積は、建ぺい率や容積率を計算する際の敷地面積から除かれます。

もともとの敷地面積が狭いうえに、このセットバック面積が大きいような場合には、建築計画に大きな影響を及ぼすことにもなり、注意が必要です。
 

④建物の防火規制

市街地における火災の危険を回避するため、建築基準法等により「防火地域」と「準防火地域」が規定されています。

防火地域または準防火地域は、都市計画区域内のすべての地域に指定されているわけではありません。

しかしその代わりに、特定行政庁から「屋根不燃化区域」の指定を受けている場合があります。

建築基準法第22条によって規定されているため「法22条区域」とも呼ばれますが、建築物の屋根や、木造建築物の外壁で延焼のおそれのある部分の構造などについて、一定の基準が定められています。

■防火地域

都市の中心市街地や主要駅前、主要幹線道路沿いなど、大規模な商業施設や多くの建物が密集している地域では、原則として耐火建築物(鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造など)にする必要があります。

※地階を含む階数が2以下、延面積が100平方メートル以下の建築物は準耐火建築物とすることができます。

防火地域内においても、一定の耐火性能を有するものとして国土交通大臣の認定を受けたものであれば、木造住宅などの建築が可能です。
しかしまだあまり一般的ではなく、普及が進んでいません。

従来から普及しているタイプの木造住宅は防火地域内に建てることができないので、木造住宅を建てるための土地を探すときには注意が必要です。

防火地域の多くは商業地域となっていますが、ほとんどのエリアが防火地域に指定されている場合もあります。
 

■準防火地域

防火地域よりも比較的緩やかな規制内容となっています。

地階を除く階数が4以上、または延面積が1,500平方メートルを超える建築物は耐火建築物としなければなりませんが、延面積が500平方メートル以下であれば一般的な木造2階建てや、一定の基準に適合する木造3階建ても建築可能です。

「準防火地域」内の木造3階建て(500平方メートル以下)では、外壁の開口部の構造および面積、主要構造部の防火の措置などについて一定の技術的基準が定められ、これに適合する建築物とすることが求められます。

※木造2階建てまたは平家建ての場合は、隣地から一定の距離内で延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏は防火構造としなければなりません。
 

理想の家づくりを

ご覧いただいたように、家を建てる土地にはそれぞれの地域によって様々な法規制があります。

せっかく土地を買ったのに、規制のために希望する家が建てられない…
といったこともしばしばあります。

A.D.Studioは「家づくりの応援団」として、お客様の理想の家づくりを実現します!
今回ご紹介した法規制などの専門的な知識からささやかな疑問まで、「身近な建築の専門家」として解決していけたらと思います。

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